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かぐや姫
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昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは毎日竹藪(たけやぶ)に行って竹を採り、竹からいろいろな物を作って、暮らしていました。ある日、竹藪に行くと、不思議(ふしぎ)な竹を見つけました。その竹の根元(ねもと)が光っていました。おじいさんは「何でこの竹は光っているんだろう。」と思って、竹を切って見て驚(おどろ)きました。切った竹の節(ふし)の間(あいだ)に、とてもかわいい女の子がいたのです。おじいさんは小さな子を手の平(ひら)に載せて、いそいで家に帰りました。
「おばあさん、見てくれ。」と呼んで、おばあさんに竹の中で見つけた女の子を見せました。おばあさんは、「神様(かみさま)が授(さず)けて下さったのでしょう。」と言いました。
おじいさんとおばあさんは女の子に「かぐや姫(ひめ)」という名をつけて、かわいがって育(そだ)てました。
かぐや姫はとても早く大きくなって、光輝(かがや)くほど美しい娘(むすめ)になりました。
おじいさんとおばあさんは気分が悪い時や気が重い時でも、かぐや姫を見るとすぐ治ってしまいました。おじいさんとおばあさんはかぐや姫を大事(だいじ)に育て幸(しあわ)せに暮らしていました。おじいさんは竹の中にかぐや姫を見つけてからというもの、竹をとりに行くたび、竹の節の間に黄金(こがね)を見つけました。だんだん生活(せいかつ)は豊(ゆたか)になって、竹採りのおじいさんは大きな屋敷(やしき)を建てました。かぐや姫は家を出ることがありませんでしたが、その娘がとても美人(びじん)だという噂(うわさ)は日本中に広まりました。
その噂を聞いて、かぐや姫に会いに日本中から男の人たちが遥々(はるばる)やって来ました。でもおじいさんはかぐや姫に会わせません。ほとんどの男の人たちは諦(あきら)めて、帰って行きましたが、本当にかぐや姫をお嫁(よめ)さんにもらいたくて、寒い日も熱い日も竹採りの家に来ている男の人が五人いました。
かぐや姫はおじいさんにこう言いました。「その五人の方に、私がほしいものを頼(たの)みます。頼んだ物がもらえたら、その方のお嫁さんになります。」
でもかぐや姫は本当にだれかのお嫁さんになる気はないので、たいへん難しい物を頼みました。
最初の人に、「天竺(てんじく)の仏様(ほとけさま)の石鉢(いしはち)をください。」と言いました。
次は、二番目の人に、金の幹(みき)で、白玉の実(み)がなっている木を持って来て下さいと頼みました。
三番目の人には中国にある火ねずみの皮衣(かわごろも)を下さいと言い、四番目の人には龍(りゅう)の首(くび)の五色の玉をとってきて下さいと頼みました。五番目の人に燕(つばめ)の子安貝(こやすがい)を持って来て下さいと言いました。かぐや姫の注文(ちゅうもん)はどれも本当に世(よ)の中にあるかどうかわからないものばかりで、男の人たちはがっかりしました。
長い間五人の男の人は竹採りのおじいさんの家に来ませんでした。最初(さいしょ)はかぐや姫のところに行きました。でも、天竺へ行くふりをして、本当は京都(きょうと)の近くにあるお寺(てら)の、古くて汚(きたな)い石鉢を持って来ました。かぐや姫はそれが偽物(にせもの)だとすぐわかりました。天竺にある仏様の石鉢は古くても光っているのです。
二番目の人は、金の幹(みき)で、白玉の実(み)がなっている木がどこにあるのかわからないし、無理(むり)に遠い国まで行きたくもないので、職人(しょくにん)にそういう木を作らせました。そして、かぐや姫のところに持って行きました。たいへん素晴らしい木を見て、かぐや姫も本物(ほんもの)だと思って、もう仕方なく結婚(けっこん)しないといけないと思いました。ところがその時、職人がお金をもらいに来たので、偽物だとばれてしまいました。
火ネズミの皮衣(かわごろも)を頼まれ三番目の人は、高いお金を使って、中国に行く職人に火ネズミの皮衣を買うのを任(ま)かせました。素晴らしい皮衣を手に入れて、かぐや姫のところに行きました。
かぐや姫は「とても綺麗(きれい)な火ネズミの皮衣ですね。でも、本物だったら、火に入れても燃えないから、確(たしか)めて見ましょう。」と言い、火の中に皮衣を入れてしまいました。残念(ざんねん)ながら偽物だったので、その衣(ころも)はぼうぼうと燃えてしまいました。
四番目の人は勇敢(ゆうかん)で、船に乗って、あちらこちら龍(りゅう)を探(さが)しに行きました。でも龍がどこにいるのかだれもわからないので、長い間海をさまよっても龍をなかなか見つけられません。そのうちにひどい波風(なみかぜ)にあって命(いのち)を落(おと)しそうになりました。もう龍を探せないので家に帰りましたが、病気(びょうき)でかぐや姫のところに行けなくなってしまいました。
つばめの子安貝を頼まれた最後の人は、燕(つばめ)の巣(す)の中を探して、子安貝を見つけたと思ってそれを手に採りました。急いで梯子(はしご)を降りようとして、転んでけがをしてしまいました。その上、燕の巣から採ったのは、子安貝ではなくて、古くて硬い燕の糞(ふん)だった。
国王の耳にまでかぐや姫の噂が届(とど)き、その美人に会いたくなりました。ある日、竹採りの家に行って、かぐや姫に会ったところ、とても気に入ったので、宮中に連れて行きたくなりました。
かぐや姫は、「私は人間の世界(せかい)のものではないので、行けません。」と断(ことわ)りました。でも国王はかぐや姫のことを忘れられませんでした。
ある夏、かぐや姫は月を見て涙(なみだ)を流(なが)していました。おじいさんに聞かれても、かぐや姫は黙(だま)っています。だんだんかぐや姫は寂(さび)しそうな様子(ようす)になって、毎晩、月を見て泣いています。おじいさんとおばあさんはとても心配(しんぱい)ですが、何もできません。八月の十五夜(じゅうごや)の前の日、かぐや姫はおじいさんとおばあさんに自分の悩(なや)みの理由(りゆう)を話しました。
「私は人間の世界のものではないのです。月から来てちょっとの間、人間の世界に住(すむ)ことになりましたが、そろそろ帰らなければなりません。十五夜になると月から天女が迎(むか)えにきます。お世話(せわ)になり、どうもありがとうございました。」
おじいさんとおばあさんはその話を聞いてとても寂しくなりました。行かないでと言っても、かぐや姫は「帰らなければなりません。残念ながら、仕方がありません。ごめんなさい。」と答えました。
すると、おじいさんは国王にかぐや姫が月へ帰ることを知らせて、行かせないように頼みました。国王が武士(ぶし)を二千人、竹採りのおじいさんの家に行かせました。
十五夜の夜更(よふけ)、おじいさんの家のまわりは、武士いっぱいでした。半分(はんぶん)は屋根(やね)に登(のぼ)って、半分は家のまわりに立って、みなはかぐや姫を守(まも)ろうとしています。家の中で、おじいさんとおばあさんはかぐや姫の手をとって、月の人を待っています。外で、弓(ゆみ)と矢(や)をもって、武士達は満月(まんげつ)を見てまっていました。すると、月が一番(いちばん)丸い時、天から月の人が降りてきました。月の天女(てんじょ)たちは光輝いているので、武士は眩(まぶ)しくて矢も放てないし、不思議(ふしぎ)なことに戦(たたか)う力と意志(いし)もだんだんなくなってしまいました。武士たちも、おじいさんとおばあさんも何もできないうちに、かぐや姫は家を出て、月の人に会いに行きました。かぐや姫はおじいさんとおばさんにもう一度(いちど)謝(あや)まりました。
「私も別(わか)れたくないですが、仕方がありません。月の世界に戻(もど)らなければいけません。時々(ときどき)月を見て、私のことを思い出してください。」と言って、国王にも手紙を書きました。そして、天女がかぐや姫に天の衣(ころも)をきせ、再(ふたた)び月の人になったかぐや姫をつれて行ってしまいました。
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