問:
高校教科書第2冊に「絶対(に)~ない」「決して~ない」が文法項目に出てきます。どちらも「绝不……」の意味だと説明されていますが、区別がありますか。
答:
まず、次の例から考えてみましょう。
①彼は日本語の先生ではありません。
②彼は絶対(に)/決して日本語の先生ではありません。
①の場合は、単に日本語の先生ではないという事実を述べています。②の場合は何かの前提があることが考えられます。例えば、彼は日本語が上手なのだから、日本語の先生ではないかと何度も聞かれた場合や日本語ができるのだから、ほかの科目ではなく日本語の先生のはずだと言われた場合などが考えられます。「絶対に~ない」も「決して~ない」も強い否定を表しますが、使用するうえでの心理面が違います。
③夜中に電話をするのは絶対に/決してよくない。
「絶対(に)~ない」は、話し手にとって夜中に電話をするのは、無条件によくないと否定する意識が働いています。「どんな条件でもだめだ」「どうしてもだめだ」という判断に基づいています。
一方、「決して~ない」は、夜中に電話をかけるのはよくないが、緊急の場合や非常事態だったら、仕方がないという前提意識が強く働いています。ですから「夜中に電話をするのは決してよくないことだが、生死に関わることなので電話をした」という文が成立します。「決して~ない」は、前提になる理由によっては、止むを得ない気持ちで例外を許す意識が潜んでいます。
④李さんはパソコンが絶対(に) ○/決して×できないだろう。
この文は、話し手が李さんに対してパソコンができないという疑いの気持ちを表しています。このような場合は「決して」が使えません。
加納陸人
文教大学教授/『日語』日本側主任編集委員