*文章連載*(第七页64楼连载重开)
第一週
『赤帽子·青帽子』 [ 志賀 直哉 ]
きげんの良し悪し、これは自分でもどうにもならない。わたしの場合、それは多く生理的に来るので、大体、疲れている時はちょっとした事でもかんにさわり、つまらぬ事で家人を怒鳴りつかたりするのだ。それと持病の胆石の起こりかけ、つまり起こる前は、不思議におこりっぽくなり、気持ちが意地悪くなる。昔、胆石の発作をしゃくと言ったのは、そういう事を言ったのではないかと思ったりした。
とにかく、わたしがそういう状態になると、家人の被害は一通りではない。ちょっとした事がひどく気に障り、我慢がならず、わたしが怒鳴り出すと、家人は一層間抜けな事をした。私は理不尽におこる。家人も、もう少し私の状態に気を付け、用心するがいいと思う。そこで思い付いたのが、次の会話にある赤帽子·青帽子である。 「赤かな?青かな?」九歳の直吉がにやにやしながら、わたしの顔をのぞき込むようにして、ひざの上に乗って来た。 「赤だ」 「赤?どうも青らしいよ」 「今は青だが、お前がそううるさくすると、すぐ赤になるんだ」 「そうかな?すこし笑っているぞ。目が笑っているぞ。本当に赤の時は目が笑わないよ」 「うるさい。降りてろ。そろそろ桃色になって来た」 「笑わなくなったな。笑わなくても、まだ青らしいぞ」 「本当によせ。そううるさくされると、青からいっぺんに赤くなるぞ」 「早く帽子を作らないから悪いんだよ。そうすれば、一々聞かなくても分かって便利なんだ」 「だから口ではっきりいっている」 「それがうそだったら、どうする?」 子供はほどということを知らない。 「うるさいやつだ。男はそうべたべたするものじゃない」 わたしは、邪険に直吉をひざから押して降ろした。母や妻が笑った。 「赤帽子·青帽子はお聞きになりましたか。」 と妻が母に言った。 「聞きました。大変いい考えですよ。お父さんが丈夫な間に考えてもらえれば、なお良かったけれど……」 母はこう言って、自分でもさもおかしそうに笑った。 「つまり、相手が利口なら、一々帽子なんかかぶらなくてもいいんだが、ばかだからそういう事が必要になるんですよ」 「そう始終顔色ばかり気を付けちゃあ、いられませんわ」 と妻が言った。 「康子のように、用の多い人はなおさらですよ」 「しかし、中々いい考えだと思う」 「危険信号は本当にいい考えですよ。赤帽子が大仰なら、赤いふさ位にしてもいいかもしれない」 「それで家庭内に感情的けが人がなくなるというのだからたいした発明だ。新案登録にする位の価値はありますよ」 |
言葉の説明
良し悪し[よしあし] 好坏
かんにさわる[癇に障る] 发脾气,恼怒
家人[かじん] 家里的人们
持病[じびょう] 老病
胆石[たんせき] 胆结石
意地悪い[いじわるい] 心眼儿坏,故意为难
気にさわる[きにさわる] 不痛快
間抜け[まぬけ] 愚蠢,呆笨
理不尽[りふじん] 不讲理
にやにや 笑嘻嘻地
べたべた 粘糊糊地
いっぺんに 一下子
邪険[じゃけん] 残忍,心狠
さも 很,非常
大仰[おおぎょう] 小题大作,夸张
ふさ 缨,穗子
新案登録[しんあんとうろく] 发明注册