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孔乙己(鲁迅作品日文版)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-8-12 8:04:38 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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魯鎮の酒場の構えは わたしは十二の歳から村の入口の 孔乙己は立飲みの方でありながら 孔乙己が店に来ると、そこにいる飲手は皆笑い出した。 「孔乙己、お前の顔にまた一つ傷が殖えたね」 とその中の一人が言った。孔は答えず九文の大銭を 「酒を二合 「馬鹿に景気がいいぜ。これやテッキリ盗んで来たに違いない」 とわざと大声出して前の一人が言うと、孔乙己は眼玉を剥き出し 「汝はなんすれぞ斯くの如く 「何、清白だと? 孔は顔を真赤にして、額の上に青筋を立て 「 そうして後に続く言葉はとても変梃なもので、「君子固より窮す」とか「者ならん 人の噂では、孔乙己は書物をたくさん読んだ人だが、学校に入りそこない、無職で暮しているうちにだんだん貧乏して、乞食になりかかったが、幸いに手すじがよく字が旨く書けたので、あちこちで書物の浄写を頼まれ、飯の種にありつくことが出来た。ところが彼には一つの悪い癖があって、酒が大好きで飲みだすと怠け出し、注文主も書物も紙も何もかも、たちまちの さて孔乙己はお碗に半分ほど酒飲むうちに、赤くなった顔がだんだん元に復して来たので、 「孔乙己、お前は本当に字が読めるのかえ」 孔乙己は弁解するだけ阿呆らしいという顔付で、その人を眺めていると、彼等はすぐに言葉を添えた。 「お前はどうして半人前の秀才にもなれないのだろう」 この言葉は孔乙己にとっては大禁物で、たちまち不安に堪えられぬ憂鬱な状態を現わし、顔全体が灰色に覆われ、口から出る言葉は今度こそソックリ丸出しの「 この場合わたしが一緒になって笑っても番頭さんは決して咎めないし、その上番頭さん自身がいつもこういう問題を持出し、人の笑いを誘い出すので、孔乙己は 「お前は本が読めるかえ」 「…………」 「本が読めるなら乃公が試験してやろう。茴香豆の茴の字は、どう書くんだか知ってるかえ」 わたしはこんな乞食同様の人から試験を受けるのがいやさに、顔を 「書くことが出来ないのだろう、な、では教えてやろう、よく覚えておけ。この字を覚えていると、今に番頭さんになった時、帳附けが出来るよ」 わたしが番頭さんになるのはいつのことやら、ずいぶん先きの先きの話で、その上、内の番頭さんは茴香豆という字を記入したことがない。そう思うと馬鹿々々しくなって 「そんなことを誰がお前に教えてくれと言ったえ。草冠の下に囘数の囘の字だ」 孔乙己は俄に元気づき、爪先きで 「上出来、上出来。じゃ茴の字に四つの書き方があるのを知っているか」 彼は指先を酒に浸しながら櫃台の上に字を書き始めたが、わたしが冷淡に口を結んで遠のくと真から残念そうに溜息を またたびたび 「たくさん無いよ。わしはもうたくさん持ってないよ」 というかと思うとたちまち身を起し 「多からず、多からず、 と首を左右に振っているので、子供等はキャッキャッと笑い出し、ちりぢりに別れゆくのである。 こういう風に孔乙己はいつも人を愉快ならしめているが、自分は決してそうあろうはずがない。ほかの人だったらどうだろう。こうしていられるか。 ある日のことである。おおかた中秋節の二三日前だったろうと思う。番頭さんはぶらりぶらりと帳〆めに掛り、黒板を取卸して、たちまち大声を出した。 「孔乙己はしばらく出て来ないが、まだ十九銭残っているよ」 そこでわたしもしばらく彼の見えないことを思い出したが、 「あいつは来るはずがない。腿の骨をぶっ挫いちゃったんだ」 「ええ、何だと」 「相変らず泥棒していたんだ。今度はあいつも眼が眩んだね。ところもあろうに 「そうしてどうした」 「どうしたッて? 謝罪状を書くより 「それからどうした」 「それから腿が折れたんだ」 「折れてからどうした」 「どうしたか解るものか。たぶん死んだろう」 番頭はその上訊こうともせず、のらりくらりと彼の帳合を続けていた。 中秋節が過ぎてから、風は日増しに涼しくなり、みるみるうちに初冬も近づいた。わたしは 「一杯燗けてくれ」 という声がした。よく聞き慣れた声だが眼の前には誰もいない。伸び上って見ると櫃台の下の 「酒を一杯燗けてくれ」 番頭さんも延び上って見て 「おお孔乙己か、お前にまだ十九銭貸しがあるよ」 孔乙己はとても 「それはこの次ぎ返すから、今度だけは現金で、いい酒をくれ」 番頭さんは例のひやかし口調で 「孔乙己、またやったな」 今度は彼もいつもと違って余り弁解もせずにただ一 「ひやかしちゃいけない」 というのみであった。 「ひやかす? 物を盗らないで腿を折られる奴があるもんか」 孔乙己は低い声で 「高い所から落ちたんだ。落ちたから折れたんだ」 この時彼の眼付はこの話を二度と持出さないように番頭さんに向って頼むようにも見えたが、いつもの四五人はもう集っていたので、番頭さんと一緒になって笑った。 わたしは燗した酒を運び出し、閾の上に置くと、彼は破れたポケットの中から四文銭を掴み出した。その手を見ると泥だらけで、足で歩いて来たとは思われないが、果してその通りで、彼は それからずっと長い間孔乙己を見たことがない。年末になると、番頭さんは黒板を卸して言った。 「孔乙己はどうしたろうな。まだ十九銭貸しがある」 次の年の端午の節句にも言った。 「孔乙己はどうしたろうな。まだ十九銭貸しがある」 中秋節にはもうなんにも言わなくなった。 それからまた年末が来たが、彼の姿を見出すことが出来なかった。そして今になったが、とうとう見ずじまいだ。 たぶん孔乙己は死んだに違いない。 (一九一九年三月) 底本:「魯迅全集」改造社 1932(昭和7)年11月18日発行 ※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。 その際、以下の置き換えをおこないました。 「彼奴→あいつ 或(る)→ある 大方→おおかた ~置き→~おき 曾て→かつて 位→ぐらい ~呉れ→~くれ 此奴→こいつ 此→この 偖て→さて 暫く→しばらく 仕舞う→しまう 終い→じまい 随分→ずいぶん 其→その 沢山→たくさん 只→ただ 忽ち→たちまち 多分→たぶん 何処→どこ 迚も→とても 中々→なかなか ~に取って→~にとって 筈→はず 甚だ→はなはだ 程→ほど 又・亦→また 未だ→まだ 見る見る→みるみる 若し→もし」 ※底本は総ルビですが、一部を省きました。 入力:京都大学電子テクスト研究会入力班(上村要) 校正:京都大学電子テクスト研究会校正班(大久保ゆう) 2005年5月8日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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