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白夜行第八集日文脚本

作者:未知 文章来源:hjenglish.com 点击数 更新时间:2014-8-18 22:25:58 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语

『泥に咲いた花の夢』


「俺たちは、醜かった。


誰もが目をそむけるほど、醜かったな。


だからこそ、誰もが突き放すその醜さを、


お互いに抱きしめようと決めたんだ。」


2年後ー


2004年冬 東京


亮司(山田孝之)はMEMORIXで秋吉と名乗り、システムエンジニアとして


働いていた。


仕事が速くて助かる、と顧客に誉められる亮司。


「秋吉さんって、ここに来る前何していたんですか?」


同僚の女性が聞く。


「ん?・・・幽霊。」


「は!?」


「お化け屋敷のバイト。」


「ふざけないで下さいよー。


あの、金属加工エキスパートシステム作ったのって、


秋吉さんなんですよね。」


「そうだよ。」


「2年前、俺は雪穂の夫の勤める、東西電装から、


開発途中の社内システムの雛形を盗み、


MEMORIXに持ち込んだ。


やり手のベンチャー社長は、怪しいのは承知でこの話に乗った。


アレンジを施せば、盗用を立証することはほとんど不可能。


いざとなれば、知らなかったと俺を切って捨てれば済む。


賢い社長はそれ以上何も聞かなかった。


雪穂は、高宮の持ちビルの店舗で、


友人と一緒に会員制のブティックをやっていた。


永明大学ソシアルダンス部のつながりを利用して、


開拓した顧客層は、


自分の為に使う金を全く惜しまない人たちだった。


ただ一つ問題は、高宮が、雪穂の嫌がらせにもめげず、


離婚を言い出さないことだった。」


夜の11時過ぎに帰宅する雪穂(綾瀬はるか)。


高宮(塩谷瞬)は一人怒ったように酒を飲んでいた。


「ただいま。ご飯は?


・・・すぐやるね。」


そう言い買ってきたお惣菜を並べる雪穂。


「言いたかないけどさ、あの店始めるときに言ったよな。


家のことはちゃんとやるって!」


「最初は、そのつもり、」


「大体!何の実績も無い君らが、あの店借りられたのは


誰のおかげだと思ってるんだ。」


「誠さんのおかげだって、わかって・・・


私、ダメな女だよね。


誠さんとの約束全然守れなくて。


子供だって出来ないし。


ほんと、何一つお返しできなくて・・・情けない・・・。」


「そこまで言ってないだろう。」


「ごめんなさい。」


泣きまねをして部屋にこもった雪穂は大きなため息をつく。


自分の指の結婚指輪を見つめながら、自分が言った言葉を思い出す雪穂。


「この結婚は、売春なんだよ。私にとって。」


亮司は探偵を使って調べたC.Mの調査報告を、転送する。


C.Mこと三沢千都留(佐藤仁美)がイーグルゴルフクラブで撮られた写真・・・。


亮司からメールを受け取った雪穂。


「見た?」亮司が公衆電話から雪穂に電話する。


「うん。ありがとう。調べてくれて。


三沢千都留、帰ってきてたんだね。」


「田舎で見合いするの、上手く行かなかったようだな。」


「お付き合いしている方も、いらっしゃらないみたいね。」


「だけど雪穂さー、そんなに焦って離婚することないんじゃない?


結婚年数長い方が金だって有利なんだろ、離婚って。


もう一回高宮と会ったって、同じ気持ちになるかわからないだろ?」


「そうなんだけどね。


金だけじゃない私も、少しはいるのよ。


とりあえず、二人をゴルフ場で引き合わせてみるよ。」


「困ったことがあったら言えよ。」


「うん。ありがとう。」


「なあ、雪穂。


たとえ別人として生きていても、俺は満足だった。


あなたがくれた世界は、俺には充分明るかったから。


だからこそ、わからなくなったんだ。


あなたが、これ以上何を求めているのか。」


ショップを掃除する雪穂は店舗の看板を見て立ち止まる。


いつものように雪穂を見張る笹垣の表情が変わる。


「もう少し・・・。」


険しい表情で店の看板を睨むように見つめる雪穂。


持っていた雑巾をぎゅっと握りしめる。


同僚と街を急ぐ亮司は、視線を感じて振り返り・・・。


雪穂は高宮と一緒にイーグルゴルフクラブでレッスンを受けることに。


受付を待つ間、千都留の姿を探す。


そこへ千都留がやって来た。


雪穂は電話が入ったふりをして入り口へと向い、


わざと千都留のゴルフバックにぶつかる。


「すみません!」


「大丈夫ですか?」


その声に振り返る高宮は、千都留と目が合い見詰め合う。


「誠さん、ごめん。


店にアポなしで、私の担当のお得意様が来ちゃったみたいなの。


どうしても行かなきゃいけなくなっちゃって。ごめん。」


「仕方ないなー。」


「私行くけど、どうする?」


「せっかく来たんだし、試しに受けていくよ。」


「そう。じゃあ私行くね。ごめんね。」


雪穂は千都留をちらっと見て立ち去った。


笹垣探偵事務所に古賀の妻が、旅行のお土産を届けにやって来た。


ふと目にしたノートの表紙に、『桐原亮司・唐沢雪穂』と書いてある。


古賀の妻が驚く。


「こちらに出てきてる、唐沢雪穂の周辺の人間探ったりしとるんですが、


なかなか手帳がないと、やりにくいもんですわ。」


笹垣(武田鉄矢)が言う。


「どうして、ここまで。


そりゃ、古賀の敵は取って欲しいですけど。」


「私も、もうわからんようになってしまったんです。


こいつら、どないしたいんか。


周りの人間まで巻き込んでしもうて。」


そう言い頭を下げる笹垣。


古賀の妻が頭を横に振る。


「あの、桐原亮司は、東京にいるんでしょうか?」


「は?」


「私だったら、もっと遠くに逃げるから。」


「エビは、ハゼのそばにおると、相場が決まっているんですがなー。」


亮司がコンビニで弁当を買うそのあとを、誰かが尾行していた。


亮司は携帯を取り出し、165番に登録したメモリックスに電話をかける。


「秋吉ですけど。」


2年前、傘のお礼にと、千都留に貰ったハンカチを見つめながら酒を飲む高宮。


そこへ雪穂が戻ってきた。


「ただいま。」


「お帰り。」


「ご飯は?・・・食べてきたっぽいね。」


「うん。昔会社で一緒だった、三沢千都留さんって人と


偶然会ってさ。」


「誠さん、ごめん。私、通えなくなっちゃった。」


「え?」


「やっぱり土曜に私が抜けると、いろいろ問題が起こるみたいで。」


「そう。じゃあ俺もやめる。」


「・・・あ、そう。なんだ。楽しくなかった?ゴルフ。」


「一度産婦人科行かない?


一緒に不妊検査受けよう。」


「・・・なんで?急に。」


「三沢さんに、雪穂の話したら、


バリバリ仕事したいなら、早く産んで、早く復帰出来る様にしたら、


結局は雪穂のためなんじゃないかって。


俺もやっぱり一人ぐらいは欲しいし、雪穂も、昔は欲しいって


言ってたじゃない。」


「そりゃ・・・言ったけど・・・。」


「東西電装に企業調査?」メモリックス社長が言う。


「芝居、下手ですね。」亮司に言われ社長が笑う。


「クライアントが不安がって電話をかけてきたよ。


あれはうちのオリジナルってことでいいのかって。」


「オリジナルです。著作権は主張出来ないはずですから。」


「まあ東西電装もその辺のことはわかっているだろう。


尾行が付いているんだったら、お前が持ち込んだって目星が


ついているはずだ。」


「俺と東西電装の接点ですよね。知りたいのは。」


「身内が手引きしたとなると、いくらセキュリティーを強化しても


無駄だからな。東西電装さんとしては。」


「興信所は警察じゃない。


結果が出なければ東西電装も、調査費用を打ち切るだろうし。


そう大騒ぎするほどのことじゃない。


だけど、何かの弾みで雪穂にたどり着かれるのは困る。


必要なのはヤツラが飛びつく、偽の接点。」


会社から出てきた亮司を尾行する男たち。


亮司はわざと引き返すと、男たちが慌てて立ち止まる。


亮司はその横を何食わぬ顔で通り過ぎていった。


爪を噛みながら夫の携帯を見つめる雪穂。


その時、自分の携帯が鳴る。亮司からだ。


「どうだった?そっち。」


「ゴルフ場で会わせたまでは良かったんだけど、


浮気どころか、三沢千都留に知恵付けられて、


子供作ろうとか言い出しちゃって。


気が無いわけじゃないと思うんだけど・・・。」


「その話、俺も乗らせてもらっていいかな。


三沢千都留を、俺と高宮を繋ぐ接点にしたいんだ。」


「接点?」


「そう。」


夜中、千都留の家の電話が鳴る。


受話器をとると、無言のまま電話が切れた。


受話器を置くと、またかかってくる。


相手は無言のままだった。


仕事に出かけていく高宮に雪穂が言う。


「誠さん。不妊治療のことなんだけど。


あんまり言いたくないんだけど、出来ないのは、


あの時の中絶のせいだと思うんだ。」


「俺のせいだ・・・って、言うの?」


「そうじゃないけど。


そんなことで子供が出来ない私がいけないんだけど。」


「今晩話そう、な。」


そう言い高宮は出かけていった。


「今晩ね。」一人になった雪穂が微笑む。


東洋商事の三沢の元に電話がかかってくる。


「おはよう。今着いたんだ。」


「誰?」


「酷いな。忘れたんだ。」


そう言い電話を切ったのは、亮司。


わけがわからず、戸惑う千都留を公衆電話から見ていた。


千都留が自宅に着くと、今度は携帯がなる。


「今帰ったね。」


「あんた誰よ!警察呼ぶわよ!」


「じゃあ、警察に会いに今晩行くよ。」


そこで電話が切れた。


千都留の部屋を見つめながら公衆電話を出る亮司。


尾行の男たちが亮司を見つめる中、亮司は千都留のマンションへと向い、


ポストを開け、そして立ち去った。


男の一人がポストをチェックしに行く。


東西電装から出てくる高宮の携帯が鳴る。


携帯メロディーは「黄泉がえり」主題歌「 月のしずく」?


千都留の家に呼ばれた高宮。


「ごめんね。さすがに怖くって。」と千都留。


「警察には?」


「相手にしてもらえなくって。


あんた男と揉めただけでしょうって。」


高宮は棚に置かれた自分の傘を見つける。


「まだ使っててくれたんですか?」


「面白い話があってさ。


私ね、実家に帰る前に、クイーンホテルに泊まるはずだったの。」


「あ・・・覚えてます。」


「でね、その時タクシーにこの傘を忘れちゃって取りに戻ったのね。


そしたら、その時、ホテルに何かの犯人がいて、


刑事さんが張り込みの為に私の部屋を使いたいって。


結局泊まりそびれちゃったんだよねー。」


高宮が家に帰る。


「お帰り。遅かったね。」


「ちょっと会社でトラブルがあって、うん。


どうしたの?飯なんか作って。」


「子供のこと、話し合おうって朝言ってたから。」


「どうせ遅いと思ったんだよ。」


「本当に仕事?」


怒ったように見詰め合う二人。


「何だよ、その顔。


大体俺いっつもこうなんだよ。


一日ぐらい待ちぼうけくらったからって、何なんだよ!」


「・・・そうだよね。


私が悪いんだよね。


いつも何もかも、私がいたらないから・・・。


私みたいなダメな女・・・まともな親になんかなれっこないよね。」


雪穂はそう言い、不妊治療の本を床に投げつけ部屋に篭る。


部屋に篭った雪穂は、大きなため息。


鏡台には、江利子からの結婚報告のカードが置かれていた。


「わざわざ来てくれるなんて。」と江利子。


「一言ちゃんと、お祝い言いたくて。」


喫茶店で江利子の向いに座っているのは、篠塚(柏原崇)。


「旦那さん、電機メーカーの事務屋さんだって?」


「ボールみたいな人なんです。丸くって。」


二人が笑う。


「あれから、人のこと信じられなくなって、


何で私だけがって。


ぶつけて受け止めてくれたのが、今の夫なんです。


僕はそのためにデブに生まれてきたんだよって。


ヘンな人でしょ?」江利子が笑う。


暫く無言の篠塚。


「篠塚さん?」


「おめでとう、江利子。」篠塚が優しくそう言う。


「篠塚さんは?いい人いないんですか?」


「俺?俺はね・・・


気になって仕方が無い人は、いるけどね。」


「高宮、あれから三沢千都留とはしょっちゅう連絡取ってるみたいだよ。


相変わらず家には帰ってくるけど。亮の方は?」


店の電話で雪穂が言う。


「上手く進んでいると思うよ。」公衆電話から亮司が答える。


亮司は相変わらず男たちに見張られていた。


「明日から買い付け旅行だから、そこで駄目押しの・・・」


店の窓から道路の向こう側の公衆電話を見つめる雪穂。


「駄目押しの?」


「最近、笹垣がいないの。」


「ほんとに?」


「油断は出来ないけど。」


「・・・」


「亮?」


「ごめん。あいつがこのままいなくなったらなって


都合いい事考えちゃった。


あるわけないのにな。」


「そしたら、一緒に太陽の下歩けたりしてね。」雪穂が嬉しそうに言う。


「そんなこと言ってたこともあったな。」


「ね!」


「じゃあ。」


亮司が電話を切った。


雪穂は外の公衆電話を見つめ、爪を噛む。


=メモリックス=


結婚相談所ブライダルサポートのウェブページのアドバイスをする亮司。


その頃、篠塚は探偵になった笹垣の事務所を訪ねていた。


「唐沢雪穂と桐原亮司がですか。」


「僕の友人が遭った事件と、関係があるかもしれないんです。」


「そうですかー。」


「桐原亮司って男、捜してらしたんじゃ?」


「あの二人に関わると、ろくなことにならんのですわ。」


笹垣は古賀の家族写真とその前に供えたご飯を見つめて言う。


「触らん方がええとちゃいますか?」と笹垣。


雪穂は翌日から一緒に買い付けに行くショップの共同経営者を


自分の家からの方が便利だからと泊まっていくよう誘う。


「ダンナは?大丈夫?


実は私苦手なんだよねー。高宮さん。」


「そうなの!?」


「理解があるような顔してさ、


一皮むけば亭主関白っていうか。


何だかんだで、こういうことしてご機嫌とらなきゃいけないわけでしょー。」


店の看板に彼の名前が入っていることを友人は言う。


「そんなことないよ。いい人なんだよ。」


その頃高宮は千都留の家にいた。


「ありがとう。心配してもらっちゃって。


いたずら電話、ぱったり止んだから。」


「そうですか!良かった。」


「ほんとに、迷惑かけてごめんね。


奥さんにも謝っておいてね。」


「仕事忙しくてもう忘れていると思いますよ。


あの人は結局、俺がいてもいなくても同じだし。」


「私が頼んだってちゃんと説明しに行こうか?」


「そういうことじゃないんです!」


ウイスキーを流しに少し捨てたあと、篠塚製薬の催眠鎮静剤


ナロボン2mgをスプーンの背で潰す雪穂。


そして潰した薬をウイスキーの瓶の中に入れ酒と混ぜ、それを棚に戻した。


高宮が帰ってきた。


「ただいま。早いね、今日は。」


「ごめんね。今手が放せなくて。


明日から一週間買い付けなの。イタリアに。」


「は!?」


「お邪魔してます。」共同経営者が顔を出す。


「どうも・・・えっと・・・」


「小竹です。一緒に店をやっている。」


「明日から一緒に出かけるから、今日は泊まってもらおうと思って。」と雪穂。


「俺、何も聞いてないんだけど。」


「あなただって、私に仕事の予定なんてイチイチ言わないでしょ。


あ、食事買ってきてあるから、適当に食べて。」


テーブルの上にはお弁当が一つ。


「リョウコ、私ちょっとコンビニ行ってくるけど、


買い忘れたものとかある?」


そう言い同僚に微笑む雪穂。


亮司は惣菜ショップでコロッケを買っているとき、店にいた女性客に


見覚えがあることに気付く。


「幽霊みたいなもんだから。」


そう言い泣きながら別れの電話をしていた女性。


二人の目が合うが。が、女性は覚えていない様子だ。


亮司の携帯が鳴る。


「亮?」雪穂からだ。


睡眠薬入りの酒を一人わびしく飲む高宮。


そこへ雪穂がやって来た。


「ごめん。テレビの音小さくしてくれる?


リョウコもう寝たみたいだから。」


「聞こえないだろ!」


「うるさいから言ってるの。」


雪穂はそう言い乱暴にリモコンを操作し、冷たく高宮を睨む。


「何だよ!」


「いいわね。毎日早く帰ってテレビ見て、お酒飲んで。」


「悪いのかよ!?」


「だからいいわねって。」


「言いたいことがあるならはっきり言えよ!」


「あなたには夢とかないのかなーって。


野心とか向上心とか。


何の努力もしないで、毎日毎日同じことを繰り返して。


自分で情けないと思わないのが不思議なだけ。」


「じゃあお前は何なんだよ!


俺の親のスネかじって店やってるだけじゃないのか!?」


「ちゃーんと家賃も保証金も払ってると思うけど。」


「誰のおかげで店始められたと思ってるんだよ!」


「あなたのお父さんのビルでしょ!」


雪穂は高宮の握る拳が怒りで震えているのを確認する。


高宮は怒りをぶつけるように酒を煽りはじめる。


「ほどほどにしないと、明日響くわよ。」


雪穂はそう言い部屋を出ていった。


早朝、亮司を高宮の眠る部屋に案内する雪穂。


「大丈夫なの?」亮司が聞く。


「大丈夫。酒と薬で漬けてあるから。」


「で、俺は何をすればいいの?」


「私のことを殴って。高宮が暴力をふるったことにしたいの。」


「・・・浮気で充分じゃないの?」


「何があるかわからないから。


バレたら不利になるような嘘もいろいろついてるし。


出来るだけ、離婚に強い材料が欲しいの。


この結婚は売春なんだから、お金貰わなきゃなんの意味もないの。


本気で。」


雪穂の真剣な眼差しに、亮司は拳を握り締め・・・


そして雪穂を思いっきり殴った。


雪穂が吹き飛ぶ物音にリョウコが目を覚ます。


午前8時の目覚ましで高宮が目を覚ます。


頭痛で頭を押さえる高宮。


体を起こすと、雪穂が鏡台の前に座り鏡を見つめている。


左目に眼帯をつけて・・・。


「どうしたの?それ。」


「覚えてないの?」


「覚えてないって・・・」


「ずいぶん飲んでたもんね。」


雪穂が眼帯を外して見せる。


「どうしたの!それ!!」


「あなたがやったんじゃない。」眼帯を元に戻しながら雪穂が言う。


「嘘だろ!?」


「リョウコに聞いてみれば?


あなたが暴れたの聞いているから。」


「それが本当なら・・・ごめん。」


「腹が立ったら暴力だなんて、どこまで幼稚なのよ!」


雪穂はそう言い立ち去り、ドアの向こうで微笑んだ。


ゴルフ場のソファーで落ち込む高宮に、千都留が声をかける。


「高宮君!?どうしたの?」


「もうだめです・・・俺・・・。


無理です・・・。」


そんな二人の様子を亮司が見張っていた。


そして、その亮司を見張る男たち。


男たちの関心は、亮司から、高宮と千都留へと移る。


亮司は小さく微笑を浮かべ、ゴルフ場を立ち去った。


=東西電装=


「三沢千都留はかつて、派遣社員として、東西電装の特許ライセンス部で


働いていました。


そしてその時期は、秋吉がメモリックスにシステムを持ち込んだ時期と


ほぼ、一致しますね。」


「二人が、高宮を利用して、システムを盗んだ可能性があります。」


亮司を尾行していた男たちが、東西電装役員にそう報告する。


「こうして疑いの矛先は、高宮と、三沢千都留に移り・・・


何の結果も出ない調査に、東西電装は見切りをつけたようだった。」


オフィス街を歩く亮司は、後ろを振り返ってみる。


そして、曇り空の下、思いっきり伸びをしたあと、笑顔を浮かべて歩き出した。


「そして、雪穂は・・・


不倫と暴力、妻の妊娠能力に対する暴言を並び立て・・・」


雪穂の弁護士が、千都留の家を訪ねていく高宮の写真を突きつける。


「こちらの写真に、心当たりはありますね?


元同僚と不倫、妻への暴力、自分の都合で中絶させたにも関わらず、


妊娠しにくくなった彼女に対する数々の暴言、


以上の事実に相違ありませんね。」


高宮が雪穂を見つめる。


「何?」


「何でもない。」高宮がそう穏やかに言う。


「先生、これからの手続きなんですけど。」


喫茶店で篠塚と会う高宮。


「お前も弁護士立てれば良かったのに。気前良すぎだろ。」と篠塚。


「俺ね、雪穂がみじめに見えちゃったんです。


弁護士引き連れて、事実を都合のいいように捻じ曲げて、


金の要求して。


こいつもう、金しか頭に無いんだなって。


そういうの、哀れに思えて。」


その会話を、隣の席で亮司が聞いていた。


夕焼けを見つめる亮司。


雪穂を殴った拳を見つめながら、その時のことを思い浮かべる。


高宮の今さっきの言葉。


雪穂の今までの言葉。


「俺がやらせたようなもんだよなー・・・。」


そう呟く亮司。


夜、雪穂がショップに行くと、ソファーで横になっていた亮司が飛び起き、


笑顔を見せる。


「どうしたの?」


亮司がCDを差し出す。


「何これ?」


「株の情報。


この口座の金で、そこに入っている銘柄、買ってよ。」


そう言い通帳を差し出す。


「これで汚い金なくなるだろ。」


「なるほどね!」


「雪穂、これからはまともに店だけやってよ。」


「何?急に。」


「俺は大して金なんていらないし、


どうにでも生きていけるしさ。


だからもう、」


「みじめだと思ってるんでしょ、私のこと。


がつがつ金に目の色変えてって。


平気よ!別に誰がどう思おうが。


もう世間なんて関係ないって言わなかったっけ。


それに、夢も叶ったし。」


「夢?」


雪穂がショップのタグを見せる。


「ここはさ、友達に無理言って、共同経営者になってもらって。


店のコンセプトも、営業も経営も仕入れも、


全部一から私が考えて、そうやって作った店なの。


高宮になんか、一円の金も知恵も出してもらってない。」


そう言い服に付いたタグを引きちぎる雪穂。


「それでも、こんな名前にしなきゃいけなかった。」


雪穂がタグを投げ捨てる。


「追い出されない為には、媚びるしかなかった。


気付いたら、笑っちゃうほど昔と一緒でさ。


お金の為に体売って、嫌われないように媚びて、


そもそも私、何がしたかったんだっけって・・・。


やっぱり、もう一度亮と太陽の下歩くんだよ。」


「そんな夢みたいなこと・・・」


「夢かな。


夢なのかな、亮。」


谷口真文(余貴美子)が掲示板の書き込みを読む。


「私は離婚しました


これでやっと、かけがえの無い人と


手をつないで歩くことが出来ます


もう二度と失わない


やっと手に入れた私の故郷、原点


這いつくばっても守るべきタラの大地


スカーレットの末裔」


雪穂はショップの名前を『R&Y』と変え、


そしてあの太陽の切り絵を店のモチーフに変え、


笑顔で接客をしていた。


道路の向こう側から、店の新しい看板と、雪穂の笑顔を見つめる亮司。


「いつまでも生きたいと思った。


いつ死んでも構わないと思った。


俺は幸せだった。」


職場に戻った亮司は、雪穂がくれたケースからあのハサミを取り出し


見つめる。


「ありがとう。またな。」


笹垣の声を思い出し、それを振り切るようにハサミをケースに戻す。


夜景を見つめ


「けれど、太陽は・・・


俺たちを許すはずがなかったんだ。」


篠塚がR&Yの前にいた。


「こんにちは。どうしたんですか?」


「店の名前、変えたんだね。」


「新しい気持ちで出直そうと思って。」


「Yは、唐沢だよね。


Rは?」


「・・・リョウコです。


二人の店なんで。」


「そうか。」


そう言い立ち去る篠塚の背中を、雪穂は険しい表情で見つめる。


「お宅もしつこいお方ですなー。」笹垣が訪ねてきた篠塚に言う。


「唐沢雪穂の新しい店の名前、知ってますか?


R&Yっていうんです。」


笹垣の表情が変わる。


「結婚も離婚も、このために、仕組まれたものだったとは


思いませんか?」


「せやったとしても、現実的に罪に問えるようなことじゃないでしょう。


前にも言うたとおり、あの二人にはもう関わらんほうが、」


「もう、関わっているんです!


川島、江利子さんと言います。」


「ああ・・・唐沢雪穂の高校時代からの友人の。」


「ええ。ほんの少しの間、僕の恋人だった女性です。


大学時代、強姦事件に遭いました。


彼女が幸せになるまでは、黙っておこうと決めてました。


あの二人は、どういう関係なんですか?」


「テッポウエビって知ってはりますか?


テッポウエビは、深ーい、暗い穴掘って、その中で生きておるんですわ。


なのに、その穴の中に、居候してるやつがおる。」


「篠塚が、何か気付いているかもしれない。」


雪穂が店の外の公衆電話から亮司に電話する。


「・・・」


「魚のハゼですわ。


その代わりハゼは普段は、穴の入り口におって、


敵が来たら尾ひれを振って、テッポウエビに知らせるんですわ。


相利共生、言うらしいですわ。


お互い、生きていくために、協力しあっているというわけです。」


「相利・・・共生・・・。


この事件、調べてもらえませんか?


二人が関わっていたのか、


もしそうならば、その理由です。」


そう言い江利子の結婚を知らせるはがきを差し出す篠塚。


「何の為に?」


「俺の為ですよ。」


笹垣が、微笑み、ハガキを手に取る。


そしてまたあの頃のような険しい表情に戻った。


雪穂の実家の庭のサボテンが、6個に増えていた。


亮司はブライダルサポートのに登録したメンバーに、


「幽霊」と言い泣いていた女性、栗原典子を見つける。


職業は、帝都病院の薬剤師。


「なあ・・・雪穂・・・。


いつ死んでも構わないと思ったんだ。


俺は幸せだったから。」


典子(西田尚美)のマンションのゴミ捨て場で座り込む亮司。


典子が声をかける。


「あの、大丈夫ですか!?


救急車、呼びましょうか?」


亮司が手を小さく振る。


「あの・・・でも・・・」


そう言い立ち上がる典子の腕を、亮司が掴んだ。


「じゃあ、酒・・・


酒、くれる?」そう言い亮司が笑う。


「酒って・・・。」


「いつ死んでも構わないと思ったんだよ。」


雪穂のショップの前に、母・礼子(八千草薫)が立っていた。


母に喜び駆け寄ろうとする雪穂。


だが、母の表情に足が止まる。


喫茶店にいる江利子の前に、笹垣がやって来た。


笹垣に会釈され、戸惑うように会釈を返す江利子。


笹垣が、江利子へと歩み寄る。


そしてもう一度会釈し、微笑んでみせた。


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