孟姜女(2)
待てど暮らせど夫からの便りはありません。春がすぎ夏になり、そして秋になり冬が近づきました。中国では昔から「寒衣を贈る」といって、家を離れている家族に冬着を届ける習慣があります。 「家でいつまでも待っていたって仕方ない。そうよ、私があの人に会いに行けばいいんだわ」 孟姜女は夫に冬着を届けるために、万里の長城に行く決心をしました。反対する両親を説得し、とうとう夫に会うために千里の道に旅立ったのです。
道中風雨に晒され、険しい山をいくつも越え、急流をいくつも渡り、女の一人旅は苦労の連続でした。お腹がすいたときは草木を食べ、靴は破れ裸足の足は傷だらけでした。それでも、 「長城に行けば、あの人に会える」 という粘り強い気迫と夫への深い愛を支えに、歩き続けました。 「どんなに苦労をしても、あの人を捜してみせる。そして見つけたら絶対離れはしないわ」 と心の中で叫びながら、前に進みました。そしてやっと万里の長城にたどり着いたときには、既に雪が降り出す頃でした。
万里の長城に着いても、夫のいるところはどこかわかりません。孟姜女は長城に働く人々を訪ね、うわさを追うようにして、ようやく夫ことを知っている人を捜し当てました。 「それで、あの人はどこにいるのですか?」 「死んだよ。ちょうどこの当たりに埋められているはずだ」 「えっ? そんな!」」 孟姜女はへたへたと座り込んでしまいました。ひたすら思いつづけていた人がもうこの世の人ではなくなっていたとは。今まで張り詰めていた糸が急に切れると、これまでの肉体的、精神的な疲れとどうしようもない絶望感が襲って来ました。 「どうして。どうして。私たちは一日も一緒に暮らしていないのに。あの人はどんな思いで死んでいったのだろう。私に何か言い残したいことはなかったのだろうか」 と夫の無念を思い、涙が流れ出しました。 「ああ、私はこれからどうして生きていったらいいのだろう」 夫がいないのだという空しさも襲って来て、涙は止めどなく溢れ、時間が経つのも忘れ泣き続けました。(つづく)
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