[灌水]「ネコの浮気はネコの勲章」 二階堂正宏
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ぼくの部屋の庭先で、その3匹の猫が母猫のオッパイを吸っているところを偶然見かけ、大いにあわてて、スケッチブックを取り出し、描き始めると、バッチリ母猫と目が合ってしまったのでした。
不思議そうな顔をして、じっとこちらを見る母猫。
ついもと違う、逃げようともしない。
実に堂々としている。
ちっとものら猫らしくない。
そうか、きっとこの猫は図々しいのだ。
微動だにしない。
じっとこちらを見ているだけ。
ウンともニャンともいわない。
おかげでじっくりスケッチができました。
それにしても、なんてみにくい顔でしょう。
顔じゅう毛だらけだし、だいたい、いくら何でも目が大きすぎます。耳が頭の上についています。キバがあります。舌はザラザラ。あくびをすれば口は耳もとまで、裂けてしまいます。どう見ても、かわいい顔じゃありません。この顔に人間の体をくっつければ妖怪変化じゃありませんか。バケ猫です。
カラダだって毛だらけだし、しっぽまでついている。
どこがかわいいんでしょう。かわいいと思う人の気が知れません。ついでで悪いけど、犬だって似たような物です。チンに似ている人間が時々いるけれど人間の風上にもおけません。もっとついでで悪いけど、馬は顔が長すぎて醜いし、蛇はカラダが長すぎる。豚はハッキリいってブスじゃありませんか。
人間だれでもそうですが、美醜はだいたい自分を基準に考える。黒人は白人を白すぎて醜いと思うだろうし、白人はその逆を思う。黄色人種は自分たちをほどよくできていると考える。
まァこういうわけで、ぼくはぼく自身を基準に考えています。
ぼくの顔は、鼻は低からず高からず、目は大きすぎず細すぎずほお骨はあまり高くなく口の大きさもほどほどで、まゆも濃すぎず、うすすぎず。口もとは、やや前につきだしておりますが、耳の位置はほどよい場所にあります。猫のように毛深くもなければ、パイパンでもありません。馬のように足は長すぎず、かといって、ダックスフントのような胴長でもない。すべてだいたいほどよくできている。
美しいとはいわないが、猫のように醜くもありません。まァまァです。
ところが、すべての動物は、ぼくのように、ほどよくできてはいません。
ひどいのになると、ミミズや、ウジのようにどっちが顔かお尻かわからないのもおります。
とまァ、こういうわけで、動物ブームも猫ブームもいったい何なのか、結局、早い話が、ぼくにはよくわからないのであります。
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