第5章 相談とアドバイス
-------------------------------------------------------------------------------- 仕事の相談でもプライベートな問題でも、上司というのは相談されるとうれしいものなので、上手に相談を持ちかけるというのは、ビジネスマンの処世術の一つです。また、相談を受けたとき、どのようにアドバイスできるかでその人の評価も決まってきます。ここではこうした相談とアドバイスの仕方を取り上げます。
1、 仕事上の相談
-------------------------------------------------------------------------------- (1) 苦情処理について相談する 李 :退社間際に申し訳ないのですが。 課長・:何ですか。 李 :ただ今、お客様からファックスでこのような苦情が寄せられまして。 課長・:ちょっと、見せて。・・・(読みながら)・・・至急、調査した方がいいわね。 李 :はい。ところが、あいにく担当者が外出中で連絡が取れないんです。どうすればよろしいでしょうか。 課長・:とりあえず、お客様に一両日中に調査の上、お返事を差し上げると連絡しておいてください。
(2) 取引先の提案について相談する 李 :課長、10分ほどお時間いただけますか。 課長・:うん、いいよ。何? 李 :実はA社から、このような共同企画の提案がなされたのですが、・・・。 ・・・(文書を渡す)・・・ それで、課長のご意見をお聞かせ願いたいと思いまして。 課長・:ちょっと、見せて。・・・(読みながら)・・・ ふんふん、いい話じゃないか。 李 :ええ、私もそう思ったのですが、あちらには上司と相談した上で改めてお返事すると答えておきました。
(3) 社内の人間関係の悩みの相談 李 :課長、今お時間よろしいでしょうか。 課長・:いいよ。 李 :実は社内のことで課長に折り入ってご相談したいとがあるんですが。 課長・:何か困っていることがあるのか。 李 :はい。実は、もっと早くご相談すべきだったのですが、△△君と△△さんが何かにつけて対立し、製品開発チームのまとまりがつかなくなっていまして、それで、どうしたらいいか、課長にご相談に伺いました。 課長・:もう少し、詳しい事情を話してくれないか。 李 :はい。ことのいきさつは・・・
常套表現と解説
・ 今、お時間よろしいでしょうか ○○分ほど、お時間をいただけますか お仕事中を申し訳ないのですが お食事中を申し訳ないのですが 退社間際に申し訳ないのですが ・ 実は・・・(事情)・・・のですが、どうすればよろしいでしょうか 実は・・・(事情)・・・のですが、課長のご意見をお聞かせ願いたいと思いまして 実は、課長に折り入ってご相談したいことがあるんですが もっと早くご相談すべきだったのですが
ここでは上司に仕事に関係することを相談するケースを取り上げました。仕事上の相談でも、プライベートなことの相談でも、相手の都合を尋ねた上で相談を持ちかけます。ですから、・のように前置きの言葉を忘れないようにしてくださいね。特に忙しい相手に相談するときは、「○○分ほど、お時間をいただけますか」と、事前にどのくらい時間がかかるかを伝えた方がいいでしょう。 用件を切り出すときは、・のように「実は・・・」と内容に入るのが基本型です。特に「実は折り入ってご相談したいことがあるんですが」は重大な用件の相談に使われます。「折り入って」が使われるのは、プライベートなことであれば、多額の借金や融資の依頼、借金の連帯保証人の依頼、就職のコネの依頼など、負担やリスクが伴う依頼と相場が決まっています。それが社内のことであれば、かなり深刻な事態であることが相手にわかります。また、「もっと早くご相談すべきだったのですが」は自分一人の力ではもう解決できなくなったことを伝える言い方で、経過を詳細に説明して上司の指示を仰ぐ必要に迫られたことを表しています。
2、 プライベートな相談
-------------------------------------------------------------------------------- (1)相談する <先輩に相談する> 李 :ぜひ、先輩に聞いていただきたいことがあるんですが、・・・。 先輩・:いいけど、何? 李 :先輩だけにご相談したい個人的なことなので、ここではちょっと、・・・。 先輩・:わかった。じゃ、仕事が終わってからどこかへ行こう。 李 :お願いします。
<上司に相談する> 李 :課長、個人的な相談事があるんですが、今晩、お時間いただけないでしょうか。 課長・:いいわよ。じゃ、仕事が終わってから、どこかゆっくり話せるところにいきましょう。 李 :ありがとうございます。
(2) 相談を受ける <悩みごとを聞く> 同僚・:李さん、今、ちょっといい? 李 :いいよ。どうしたの。 同僚・:ちょっと、悩んでいることがあって、それで・・・。 李 :わかった。僕でよければ、相談に乗るよ。何でも言って。 同僚・:ここじゃ、ちょっと・・・。 李 :じゃ、喫茶店にコーヒーでも飲みに行こうか。 ・・・(喫茶店で)・・・ 李 :それで、何かあったの? 同僚・:うん、実は人事課のAさんから結婚を申し込まれちゃったんだけど、悩んでるんだ。 李 :好きじゃないの?それとも、何か問題があるの? 同僚・:嫌いじゃないんだけど、彼、結婚したら会社を辞めて家にいて欲しいというの。でも、私、働き続けたいし、・・・。
<同僚を励ます> 同僚・:今夜、時間空いてる? 李 :うん、空いてるけど、何? 同僚・:君に相談に乗ってもらいたいことがあるんだ。 李 :うん、いいよ。 ・・・(二人飲み屋で)・・・ 同僚・:この前、あんな大きなミスをしちゃって、みんなにもあわせる顔がないよ。 李 :済んでしまったことは仕方がないじゃないか。 同僚・:でも、すっかり自信をなくしちゃったよ。それに、会社にも迷惑を掛けちゃったし、それで、もう会社を辞めようかと思って。 李 :君らしくないぜ。次にがんばればいいじゃないか。会社を辞めても何の解決にもならないじゃないか。 同僚・:それはそうなんだけど、でも、・・・。 李 :誰にでも失敗はあるよ。とにかく今日は嫌なことは忘れて飲もう。
常套表現と解説
・ 今、時間空いてる? 今、ちょっといい? 今、忙しい? ・ ちょっと困ったことがあって、それで・・・ ちょっと悩んでいることがあって、それで・・・ 相談したいことがあるんだけど、・・・ 相談に乗ってもらいたいことがあるんだけど、・・・ ぜひ、△△さんに聞いていただきたいことがあるんですが、・・・ ぜひ、△△さんに相談に乗っていただきたいことがあるんですが、・・・ 課長、個人的にご相談したいことがあるんですが、今晩、お時間いただけないでしょうか ・ 気にするなよ 気にするほどのことじゃないよ くよくよしたって仕方がないよ 済んでしまったことは仕方がないよ 誰にでも失敗はあるよ 次にがんばればいいじゃないか 君らしくないよ
ここではプライベートなことを相談する例を取り上げました。親しい友人であれば、・のように前置きの言葉で相手の都合を尋ね、率直に相談すればいいでしょう。個人的な悩み事の場合、相談を受けたものは励ましたり慰めたりすることになりますが、日本人がよく使う励ましの言葉を・に挙げておきました。 上司にプライベートなことを相談する場合は、「個人的にご相談したいことがあるんですが、今晩、お時間いただけないでしょうか」のように言って、時間を作ってもらうといいでしょう。なお、「ぜひ、△△さんに聞いていただきたい(・相談に乗っていただきたい)ことがあるんですが、・・・」は、「あなたにしか相談できる人はいません」という気持ちが表れる表現なので、特定の人に何かを相談するときには効果的でしょう。
3、客からの相談
-------------------------------------------------------------------------------- (1) 客の希望を尋ねる 店員 :いらっしゃいませ。 客・ :娘の高校進学のお祝いにパソコンを買ってやりたいと思っているんですが、適当なものはありませんか。 店員 :娘さんは今度高校一年生になられるんですか。おめでとうございます。あのう、それで、ご予算はいかほどでございましょうか。 客・ :できれば、20万円程度で抑えたいんですが、・・・。 店員 :何かご希望の機種がございますか。 客・ :子供部屋が狭いので、大きいパソコンを置くスペースがないんです。 店員 :でしたら、ノートブック型のパソコンがよろしいでしょうね。持ち運びにも便利ですから。 客・ :じゃ、そのパソコンを見せてください。 店員 :はい、では、こちらにどうぞ。
(2) 商品の紹介 店員 :ご予算から申しますと、この二種類の機種がお勧めですが、いかがでしょうか。 客・ :値段はあまり変わらないようですが、二つはどう違うんですか。 店員 :一番の違いは処理速度です。こちらの方がマシンの性能としては上になります。 客・ :じゃ、どうして値段がほぼ同じなんですか。 店員 :はい、こちらは性能はやや劣りますが、ワープロ、インターネット、メールといった普段よく使うソフトがセットでついていて、買って帰ったその日からすぐ使えます。 客・ :なるほど。
(3) アドバイス 店員 :失礼ですが、娘さんは今までパソコンをお使いになったことがおありですか。 客・ :いいえ、初めてです。 店員 :でしたら、私はソフトがセットの方がよろしいかと思いますが。それに、別にソフトを買うとなると、結局、お高くついてしまいますから。 客・ :確かにそうですね。でも、性能の差が気になりますねえ。 店員 :あのう、最近のパソコンは性能が高くなっていますから、実際使ってみて、それほど差を感じることはございません。ちょっと、ご覧になってください。 ・・・(二つのソフトで、実際にメールソフトを動かしてみる)・・・ このように、ほとんど差はございません。 客・ :確かに。 店員 :店員の私が申し上げるのもなんですが、最近は毎年新機種が出て、性能がよくなるばかりか、お値段も安くなる傾向にあります。ですから、入門機として、あまり高い機種をお買いになるのはお勧めできません。 客・ :いやぁ、これはご親切にどうも。じゃ、こちらのソフトつきの機種にします。 店員 :どうもありがとうございました。これ、私の名刺ですが、使っている上で何か問題がございましたら、こちらにお電話ください。
これはかなり忠実にあるパソコンショップでのやりとりを再現したものです。最近のお客は目が肥えていますし、情報も持っていますから、やみくもに売り込もうとするよりも、<アドバイス>の会話のように、お客の立場に立ってアドバイスする方が好感を持たれますし、また売り上げも伸びるでしょう。また、単に店としてのアフターサービスではなく、個人としてもアフターサービスをする店員が増えています。そうすれば、店員個人とお客との信頼関係が生まれ、客が客を紹介してと売り上げ増につながっていきます。これは、あらゆるビジネスの世界に共通して言えることではないでしょうか。この会話例、参考になりましたか。
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